お米を主食とする日本において、パン文化が浸透してもう久しくなります。
最近では高級食パンがトレンドになったり、メロンパン専門のお店があったりと、特色あるパン屋さんも見られます。
パン業界で働きたい、職人になりたいといった方のなかには、資格をとるべきか悩む人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、取得の必要性をはじめ、種類やそれぞれの特徴、難易度、費用などについて解説します。
パン職人になるには
パン職人として働くには、パン屋で働いたり開業したりするだけではありません。
食品メーカーでパンの開発・製造に携わる、パン教室や専門学校の講師として働く、レストランやホテルのベーカリー担当になるなど、いろいろな選択肢があります。
どのような道に進む場合でも、パンに関する知識やスキルが不可欠です。
パン職人として活躍するために必要な知識やスキルは、専門学校へ進学したり、パン屋などに就職して修業したりすることで習得できます。
パン職人になるうえで資格は必須ではありません。資格を取得しなくても、知識やスキルがあればパン職人としての活躍が可能です。
ただ、パンに関する資格を有しているほうが有利になることが多いことも事実。
具体的には、合格を目指すために学びを深められたり、就職の際に有利になったりしますし、また、有資格者になることで、パンに関するプロフェッショナルであることが証明できます。
したがって、パン職人になり活躍幅を広げるためには、資格取得が有効だと考えられます。
パン資格を選ぶときのポイント
パン資格にはさまざまな種類がありますが、どれを目指せばよいか分からないといった人も多いのではないでしょうか。
ここでは、種類が多いパン資格について、選び方のポイントを解説します。
目標を明確にする
たくさんの種類のなかから自分が取得すべきものを選ぶときは、今後のビジョンを明確にすることが大切。
理想のパン職人像や、開業したいパン屋のイメーを考えると、必要な知識やスキルが明らかになり、取得すべき資格が具体的になるはずです。
パン職人を目指すうえで資格は必須ではないにもかかわらず、なぜパンに関する資格を取得しようと考えたのか、今一度考えてみましょう。
パン職人として就職するため、あるいはキャリアアップを目指して転職するため、パンのプロフェッショナルとして自信をつけるためなどの理由があるかと思います。
取得する目的を明確にしておくことも、資格選びに有効です。
資格の種類を知る
方向性が定まってきたら、どういった種類があるかを調べます。
種類をはじめ、それらの違いについてリサーチすることが重要です。
種類については、国家資格か民間資格、実用的か趣味の範囲なのか、といった分け方ができます。
そのほか、学ぶ内容も異なります。
自分が目指すものとマッチしたもの選ぶことが第一ですが、ほかの条件として、社会的価値の高さも重視するとよいでしょう。
社会的価値が高いことの要件には、社会的信用・希少性の高さ、社会的需要の多さが挙げられます。
国家資格など難易度の高いものの場合、社会的信用・希少性の高さにつながるケースが多くなります。
また特定の講習を受ける必要があったり、その学校でしか取得できなかったりするものについても同様です。
社会的需要を把握することは簡単ではありませんが、パン業界やフード業界のトレンドを押さえるなど、アンテナを張っておくとよいでしょう。
資格の難易度を調べる
難易度を調べておくこともポイントです。
難易度が分かれば、合格までに要する期間が把握でき、「いつまでにどんな知識・スキルを習得していたいのか」といった自分の目標に合わせた選択が可能になります。
また、難易度によっても、専門学校やスクールに通うのか、オンデマンド学習するのか、独学するのかなど、学習方法が選びやすくなります。
そのほか、受験条件や費用についても調べたうえで学習を開始しましょう。
パン職人になるための資格とは
パンに関する資格にはさまざまな種類がありますが、ここではパン職人を目指す人向けのものを紹介します。
それぞれ特徴や難易度、費用などをまとめていますので、参考にしてください。
パン製造技能士
パン製造技能士は国家資格で、2級から特級まであります。
パン作りの技能を認定するための試験となっており、取得すれば実力の証明となります。
ただし受験条件が厳しく、イチから学習を始める方ではなく、すでに職人として働く方がスキルアップのために取得するものといえます。スキルの証明には非常に有効です。
運営団体 | 厚生労働省 |
試験内容 | 学科、実技 |
受験条件 | いずれかの条件を満たす必要あり
<2級> <1級>
・2級合格かつ、2年以上の実務経験 <特級> |
難易度(合格率) | <2級> 約60% <1級> <特級> |
費用 | 学科試験:3,100円 実技試験:16,500円 ※実技試験の受験料は、各都道府県によって異なる場合あり |
製菓衛生師
製菓衛生師は、都道府県知事が認定する国家資格です。
衛生的かつ安全に、お菓子・パン作りをするための知識や技術を有していることを証明できます。
製菓に関するものではありますが、カリキュラムにはパン製法の工程も含まれます。
試験内容の「製菓理論及び実技」では、「和菓子分野、洋菓子分野、製パン分野から選択すること」とされています。
また、製菓衛生師の資格があれば、開業するときに必要な「食品衛生責任者」が申請のみで取得可能です。
運営団体 | 厚生労働省 |
試験内容 | 学科、実技 |
受験条件 | いずれかの条件を満たす必要あり ・都道府県知事の指定する製菓衛生師養成施設において1年以上製菓衛生師として必要な知識及び技能を修得したもの ・2年以上菓子製造業に従事したもの |
難易度(合格率) | 2021年:75.2% 2020年:83.4% 2019年:79.7% |
費用 | 試験地により異なる 東京都の場合: 9,500円 |
パンマイスター
パンマイスターは、通信教育で40年以上の実績を誇る、創芸グループの通信講座で取得できる民間資格です。
自宅に届く教材(テキスト5冊・DVD3枚)で学び、修了試験に合格すると認定証がもらえます。
体系的なカリキュラムの中で、全118種類のレシピが習得できます。プロ志向の技術が身につけられ、講座の受講中は、講師への質問が可能です。
運営団体 | 日本創芸学院 |
試験内容 | 通信講座に内容をふまえた修了試験 |
受験条件 | なし ※通信講座の受講後、修了試験に合格する必要あり |
難易度(合格率) | 不明 |
費用 | 受講料:64,000円(税込70,400円) |
パンアドバイザー
パンアドバイザーは、日本野菜ソムリエ協会による民間資格。
パンアドバイザーは「パンを食べる人」の視点で学べることが特徴です。
取得することで、お客さまにパンの味わい方や楽しみ方を伝えることができるようになります。
取得するには、協会が開講している講座を受講した後、修了試験の合格および課題の提出が必要です。
運営団体 | 日本野菜ソムリエ協会 |
試験内容 | 筆記形式(テキスト持込可) |
受験条件 | 講座の申し込みにあたっては条件なし ただし認定を受けるためには、以下を満たす必要あり ・講座全4回中3回以上出席すること(2回以上欠席すると修了試験を受けられない) ・修了試験に合格すること ・課題を提出すること |
難易度(合格率) | 90%以上 非公開 |
費用 | 受講料:75,500円(税込) 追試受験料:12,000円(税込) |
パンコーディネーター
日本で初めて「パンを食べる視点からパンに関する適切な助言・提案を行なうことができるプロフェッショナル資格」として、パンに関わる仕事を目指す人へ向け、公益財団法人日本生涯学習協議会(所管:内閣府)より監修・認定を受けたものです。
日本で唯一ということで、希少性が高いことが特徴です。
合格に向けて勉強するというよりは、講座を受講して認定試験を受けることで習得可能な資格です。
受講料は高めですが、短期間(2~3日)で取得できるメリットがあります。
3つのランクが設定されています。習得可能なスキルには、以下のような違いがあります。
- パンコーディネーター:パンの歴史や種類・材料、パンのマーケット、パンのテイスティング
- パンコーディネーターエキスパート:パンに関する企画・提案、文書作成、プレゼンテーションスキル
- パンコーディネーターアドバンス:パンに関する知識や技術を相手に伝える手法
運営団体 | 日本パンコーディネーター協会 |
試験内容 | 講座の受講後、認定試験 |
受験条件 | 低いランクから順番に受講する必要あり |
難易度 | 簡単~普通 |
費用 | 132,000円(税込) ※エキスパート・アドバンス資格は別途費用が必要 |
ベーカリーインストラクター資格
ベーカリーインストラクター資格は、日本ベーカリー協会の認定資格です。
プロのパン作りのコツや技術が習得できます。本格的なパン作りが学べて、パン屋の開業やパン職人を目指す方におすすめです。
リライブフードアカデミーのオンデマンド講座では、パソコンやスマホなどを利用して、オンラインで学べます。
1年間かけて自分のペースで受講できることが特長です。
目安としては、1日約1時間程度の学習時間で、最短3か月程度で資格が取得できます。
初心者でも理解しやすい講座内容となっています。
運営団体 | 日本フードベーカリー協会(JFBA) |
試験内容 | オンライン及びオフラインでの受験 |
受験条件 | リライブフードアカデミー(通学及びオンライン)認定講座修了者 |
難易度(合格率) | オンライン(小テスト合格)及びオフラインテスト 70%以上の正答率 |
費用 | 受講料:165,000円(税込) 受験料:11,000円(税込)※講座受講者免除 |
独学でもパン資格の取得を目指せる?
学習方法についてですが、受験条件等を満たしていれば独学でも取得は目指せます。
ただ、より効率よく学べて、スキルが習得しやすいのは、やはり通学やオンデマンド学習だと考えられます。
ここまで述べてきたように、パン業界で働くうえで必須の資格はありません。
そのため、資格は取得することよりも、学ぶこと自体が大切です。
取得に向けた学習を通して、パンに関する知識や技術を磨くことを重要視すべきでしょう。
そのようなことからも、独学よりも通学やオンデマンド学習を選択したほうがよいケースが多いといえます。
専門学校やスクールに通うほどの時間がない方は、オンデマンドで学べる講座を選択するとよいでしょう。
通信制での学習方法を選択する場合は、サポート体制がしっかり整っているかどうか確認しておくことがポイントです。
困ったり悩んだりしたときのサポートが手厚ければ、通学と遜色ない環境で学べます。
パン資格にはたくさんの種類があり、どれを選べばよいか迷う方も多いかと思いますが、気になる資格についてとりあえず勉強を始めてみるのもいいのではないでしょうか。
パン資格の取得に向けて学び始めれば、自信につながり、もっとパンが好きになれるはずです。
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